網膜静脈閉塞症
網膜静脈閉塞症とは
網膜全体に分布する血管に網膜静脈があります。網膜静脈が詰まる(閉塞する)ことによって血液やその成分が血管からあふれ出して、眼底から出血したり。網膜の中央にある黄斑部の浮腫(むくみ)が生じるなどさまざまな障害が引き起こされる病気です。静脈の根元が閉塞する「網膜中心静脈閉塞症」と、静脈の枝分かれした一部分が閉塞する「網膜静脈分枝閉塞症」があり、動脈硬化、高血圧、糖尿病のある人に多いとされています。
- 症状
網膜中心静脈閉塞症では、急速な視野異常、変視症、視力低下が生じます。視野異常は片目の全体が、ぼんやりとかすんで薄暗く見えるが、真っ暗ではない、と言った症状が典型的です。一部暗い部分とある程度明るい部分が混在するのも特徴です。視力低下も病状の程度により、手動弁(手の動きが判別できる程度)といった高度の視力低下を来たす場合から1.0 近くと正常に近いものまで様々です。
網膜静脈分枝閉塞症では、急速な視野異常、変視症、視力低下が生じますが、全く無症状で気付かないうちに跡形になって、そこに発生した新生血管から硝子体出血を起こしてはじめて発見されることもあります。視野異常は典型的には(斜め)上半分か下半分に、薄暗く見えにくい範囲が出現します。残りの半分がほぼ問題なく見えているのが特徴です。ほとんどの人が、一部歪んで見える自覚症状を訴えますが、視力低下は黄斑のむくみの程度により、0.1程度から1.0以上と正常に近いものまで様々です。
- 原因
多くの場合、脳卒中と同じで、高血圧・動脈硬化が原因です。糖尿病などもリスクを高める一因です。したがって、中高年に生じることが多いです。数は少ないですが、20代30代の人に発症することがあります。若年者の場合は高血圧の合併がなく、血管の炎症が原因であることが多いです。眼科治療と同時に、高血圧、高脂血症、動脈硬化といった基礎疾患の治療を行うことも重要です。
- 治療
網膜静脈閉塞症の治療においては、そもそもの原因である高血圧や動脈硬化に対する内科的な治療も大切ですが、眼科的にも症状に応じて以下のような方法で治療を行うことがあります。
- 内服薬による治療:静脈にできた血栓を溶かす薬や網膜の血管を拡張する薬などを処方することで、血流の改善を図ります。
- 抗VEGF療法:黄斑部のむくみ(黄斑浮腫)をとる目的で抗VEGF中和抗体を硝子体内に注入する硝子体内注射を行い、浮腫の退縮を図ります。
- レーザー光凝固術(網膜光凝固術):網膜や黄斑部に発生した浮腫をレーザー光線で焼き固めて退縮を図ったり、網膜上に発生した酸素や栄養の不足した部分をレーザー光線で焼き固めて新生血管の発生を予防したり退縮を促します。
- 網膜や黄斑部の発生した浮腫が、上記治療によっても長期間改善されない場合、硝子体手術によって硝子体を取り除くことで網膜への圧迫を軽減させて、浮腫の退縮を図ることがあります。また、硝子体出血や網膜剥離を合併した場合、硝子体手術によって治療していきます。