斜視・弱視
斜視について
- 斜視とは
目を合わせた時に、片眼はまっすぐこちらを見ており、もう片眼が違う方向を見ているように見える状態のことで、眼位ずれとも呼ばれます。斜視は、右目と左目のずれが病的なものを言います。
- 斜視の原因
乳児から小児期に見つかる斜視の多くは共同性斜視であり、大人になってから見つかる斜視の多くは麻痺性斜視です。
共同性斜視は、近視・遠視・乱視などの屈折異常や、ピントを合わせる調節機能の働き過ぎなどで起こることがありますが、ほとんどの場合原因は不明です。
麻痺性斜視は、目を動かす筋肉(外眼筋)の病気や、頭のけが、脳の病気などが原因で起こります。こちらは年齢にかかわらず発生する可能性があります。
また、斜視のように見えても斜視がない偽斜視もあります。偽斜視は治療する必要がありませんが、斜視か偽斜視かを見分けるのは難しいので、気になったら眼科専門医の診療を受けましょう。
- 斜視の種類
斜視には、内斜視、外斜視、上斜視(下斜視)、回旋斜視があり、目のずれる方向によって診断できます。内斜視では、乳児内斜視や調節性内斜視が多くなっています。
外斜視では間欠性外斜視が多く、多くはぼんやりしている時に目がずれるものです。
また横目でなにかを見る時にのみ、下斜筋過動によって目が上にずれるタイプの斜視もあります。子供の斜視は、程度がさまざまです。治療が必要な場合もありますが、定期的な経過観察だけが必要とされることもあります。斜視に初めて気づくのはほとんどがご両親ですが、特定の状態でだけ左右の眼がずれるタイプの斜視もありますので、学校などで受ける検診によって見つかるケースも珍しくありません。ちなみに子供の斜視は、児童100人のうち、2〜5人程度の頻度で見つかります。
- 斜視の症状
左右の眼の位置のずれ、まぶしがる、片目をつむるなど、ご家族などが気がつきやすい症状が多い中、ご本人が自覚する症状としては複視(物が2重に見える)があります。ただし、複視が起こらないタイプの斜視もあります。
- 斜視の検査
視力、屈折、両眼視機能、眼底など眼科の基本的な検査に加え、目の位置のずれを調べる眼位検査を行います。正確な診断のために、眼位検査では正面に加え、さまざまな方角を見た際の眼のずれを調べます。特に痛みやお体に負担がかかる検査ではありませんので、安心して下さい。
- 斜視の治療
斜視の治療には、視力や両眼視機能を改善させるための視機能向上と、容姿を整える整容という2つの目的があり、どちらも重要な治療ですから、片方だけの治療を受けることも可能です。
■ 屈折矯正(眼鏡装用)
近視・遠視・乱視など屈折異常を伴った斜視の場合には、眼鏡を装用して屈折異常を矯正する治療を行います。遠視に伴う斜視では、眼鏡によって斜視が軽くなる効果が特に期待できます。
■ プリズム眼鏡装用
普段使われていない斜視の方の眼で見る視力回復トレーニングで、麻痺性斜視に行われています。
■ 手術
眼球に付着している「外眼筋=眼を動かすための筋肉」を移動させます。手術を受けられる適切な年齢もありますので、詳しくはお尋ねください。
- 治療の予後
斜視のは治療で改善可能ですが、少しだけ斜視が残ることや、多少の過矯正が起こるケースもありますし、再発してずれが戻る可能性もあります。そして、たとえ手術を受けたとしても満足できる結果に結びつかない場合もあり、数度の手術がす必要になるケースもあります。
弱視について
弱視とは発達期にきちんと物を見ることで視機能が発達していきます。発達期に斜視や屈折異常があると、きちんと物を見る機会がなくなり、視機能の低下が生じます。これが弱視です。片眼のみに起こる場合もありますが、両眼に起こる場合もあります。
- 弱視の原因と種類
弱視は、斜視、先天白内障、屈折の左右差、両眼の屈折異常などを原因として起こります。代表的な弱視には、斜視弱視、視覚刺激遮断弱視、不同視弱視、屈折異常弱視があります。
視覚は乳幼児期(1歳半〜8歳頃まで)に視覚刺激を受けて、明瞭にものを見ることで発達していきます。両眼視機能の発達には、乳幼児期の中でも特に感受性が強い時期に物を見るという視覚刺激が欠かせません。この時期に刺激を受けていないと視機能の発達が悪く、弱視になります。
- 弱視の症状
弱視は、片眼あるいは両眼の視力が低く、両眼視機能も低い状態ですが、子供の弱視では明瞭に見える状態を経験していないため、弱視を自覚するケースはほとんどありません。テレビを近いところで観る、見にくそうにしているなどの様子からご家族様が気づかれることがよくあります。幼い場合、十分な検査ができない場合がありまあすが、乳幼児の視覚刺激は、視機能の発達に欠かせないものですから、何度か再検査を繰り返して正確な診断を受けることが重要です。
- 弱視の検査
視力、両眼視機能、眼底などを調べます。また、弱視のように視力が出ない他の眼科疾患がある可能性もありますので、緑内障、視神経低形成、黄斑低形成がないかなども検査します。
- 弱視の治療
弱視は、発見したらすぐに治療をスタートすることが視機能発達のためには重要です。近視・遠視・乱視など屈折異常を伴う弱視の場合には、眼鏡による矯正を行います。眼鏡を装用していただいても視力が向上しない場合は、アイパッチを使った治療を行います。これは、よく見える方の目を1日2時間までを目安に毎日行っていただきます。そうすることで、弱視の方の目を積極的に使っていただき視機能の発達を促します。
- 治療の予後
幼児の弱視では、早めに治療を受けることで矯正視力が回復するケースが多いですが、裸眼視力が低いままということはあります。特に難治性の弱視や屈折異常がかなり強い弱視の場合、矯正視力が0.5未満にとどまる可能性もあります。この場合は、弱視治療後も眼鏡をかけ続けることになります。